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House Ymir


「文脈を翻訳し、引き継ぐ」

戦後間もない古い地図を開くと、敷地周辺は80軒余りの住宅が密集し、その周りを田畑が取り囲む一つの集落であったことが窺えた。以降、高度成長期のモータリゼーションや近郊大規模道路の整備、また鉄道駅からのアクセスの悪さが重なり、この地域の人々は自動車を主要交通手段とした生活を送っている。しかしながら、その多くは戦後から変わらぬ木造住宅で暮らしているため、私有地内に自動車を置く余裕がなく、近隣に車庫や駐車場を借りている。今回の計画敷地内にも、建主が曽祖父の代から引き継ぐ3棟の車庫が建っており、そんな車庫とともにある風景の中に建つべく住宅の佇まいを考えた。

まず既存車庫は壁、天井を解体、柱梁の状態にし、傷んだ部分に補修を施した。躯体の顕になった車庫は、車を停めるための機能/規定された寸法がリセットされ、その大部分に屋根を掛け直すことで、特定の機能を持たない半外部空間とした。そこに添えるように計画した住宅の軒先は、既存車庫との関係を均質に保つために高さを揃えているが、敷地奥は寝室や子ども室を備えた二階建てのより親密な空間としているので、逆に高さを確保するために棟木は迫り上がり、自然と屋根がねじれる形状となった。敷地を俯瞰すると、周辺からそのねじれた屋根だけが見え、屋根がこの建築のファサードを築いているようであるが、近づいていくと徐々に車庫にスケールダウンするという不思議な建ち方をしている。また柱は住宅部分の構造体としての役割だけでなく、半外部から延長された内部を規定するための存在として位置付けている。床の素材は、双方ともに柱間で分かりやすく切り替え、部屋のような気配をつくった。それに家具が加わることで、その特異性を取得する。妻側から見る風景は、柱間に従ってシーンが切り替わり、既存車庫の存在を微かに呼び起こす。


PROGRAM:  House
AREA:  124m²
LOCATION:  Matsubara, Osaka
COLLABORATIVE ARCHITECT: Tadashi Yoneda
STRUCTURAL ENGINEER: Jun Yanagimuro
BUILDER: Kohatsu
GARDEN: Tomonori Nakayama/ enen
CURTAIN: Yuriko Nagayoshi/ jyu+
FURNITURE PRODUCT: Yuki Matsumoto
OUTSIDE FURNITURE PRODUCT: bowlpond
PHOTOGRAPHY: Benjamin Hosking
PUBLICATION: 新建築住宅特集2021年12月号