iori
「日常とセノタフ」
”都市は部分からなる。それらは部分のどれも独自の性格を持つ。都市はまた基本要素群をそなえ、それらの周囲に建物群が集積する。モニュメントはそこで都市変動のなかの定点として存在する” Aldo Rossi『L'architettura della città』, 1966/ アルド・ロッシ『都市の建築』(日本語訳) , 1991
私たちの”日常”は、機能や利便を軸に日々更新されており、時代の枠組みから外れたものは、元から何もなかったかのように記憶から消されてしまう。清洲における曲物は、今まさにその時を迎えようとしている。
4階の一室に浮かべた曲木の輪は、清洲において曲物が15世紀初頭から続く伝統産業であったことを示している。場所性を帯びた”モニュメント”ではなく、記憶と伝承を目的とした”セノタフ”として。主室の中心に鎮座するその輪は、床に座ると低天井、立つと空間を規定する壁となり、その下部から漏れ出た光は床面に反射し、朧げに領域を描く。また潜り手前の踏込は、機能優先のワンルームマンションの様相を残した空間である。そこは建物外の街並みの延長線上にある”日常”の一端に過ぎず、主室との差異を際立たせる。
PROGRAM: Hotel
AREA: 44m²
LOCATION: SEVEN STORIES 4F, Nagoya, Aichi
BUILDER: WORLD Co., Ltd.
PHOTOGRAPHY: Tololo studio
PUBLICATION: 商店建築2022年2月号、新建築住宅特集2024年11月号