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Church House

「ダーニングを施す」

よい建築は織物に似ている。一本一本の糸が交互に織り重なり、繊細な質感を生み出すように、部分同士の慎ましやかな呼応関係により、全体の均衡が保たれている。
私たちが初めてこの教会を訪れた時、会衆席や身廊、祭壇など、宗教的な機能と装飾の多くは、既にディベロッパーの手によって強制的に剥ぎ取られていた。それは呼応関係を断ち切られ、ほつれ破れた織物のようだった。しかし幸いなことに、ステンドグラスでつくられたランセット窓やパイプオルガン搬入用の巨大な開口部などは、辛うじて竣工当時の状態を保っていたことから、それらを拠り所にダーニングを施すことにした。例えばランセット窓の部屋内側には、痛んだステンドグラスの保護と断熱用空気層の確保を兼ね、もう一層ガラスサッシを設けた。その間にスラブを挟み込むことで、一階部分では高窓として天井を照らすステンドグラスが、二階部分では足元を仄かに照らす地窓となる。教会では宗教的装飾の大役を担っていたステンドグラスが、住宅においては日常に色を添える部分へと変わり、それが他の部分と関係を取り結ぶことで、この建築の住宅としての新たな全体性を築いていくだろう。
ダーニングとは破れたところを元通りに修復することではなく、保護を前提としながらも、異色の糸による上縫いで意味の変換/更新を行うことである。それがまた次のダーニングへの拠り所となり、長く時間を共有することで人々の記憶へと変わってゆく。建築が物体である以上、モノと記憶の循環には意識的でありたい。歴史から一時的に住宅として預かったこの建築が、例え信仰の場へと戻らずとも、100年、200年とダーニングを繰り返しながら、記憶の交感の場としてあり続けることを切に願う。


PROGRAM:  Housing Complex, Conversion of Church
AREA:  418m²
LOCATION:  Ballarat, Australia
BUILDER: Broadbent Building Co (Under Construction)
PUBLICATION: 新建築住宅特集2023年1月号